オタク定義論の続き

「80年代サブカルチャーのウラ」
ゲスト︰中森明夫
https://youtu.be/_d5DGF1BgQI

命名者とされている中森明夫氏の定義では
・アニメファン
・SF小説を大量に持つ読書家
・有名進学塾に通う勉強家
・オーディオマニア
・カメラ小僧
マイコン少年
・怪獣マニア
などの総称が〈おたく〉でした。
要するに、アニメ視聴や読書や勉強など世間一般ではありえないマニアックな趣味を持つ人々を一括して〈おたく〉と呼び、差別したのが中森氏の使い方です。

> 本棚にビシーッとSFマガジンのバックナンバーと早川の金背銀背のSFシリーズが並んでる奴とか、
(中略)
> 有名進学塾に通ってて勉強取っちゃったら単にイワシ目の愚者になっちゃうオドオドした態度のボクちゃん、
> オーディオにかけちゃちょっとうるさいお兄さんとかね。
出典:中森明夫「僕が『おたく』の名付け親になった事情」
別冊宝島104『おたくの本JICC出版局、1989年
www.burikko.net/people/otaku01.html

> 怪獣マニアって「おたく度」が高いからね。アニメやSFやマンガファンも「おたく度」が高い。「SFアニメマンガ」なんていったらかなり高い。
出典:中森明夫氏インタビュー「〈おたく〉族の神話学」
『筑波學生新聞』1985年3月臨時増刊号
irdb.nii.ac.jp/00843/0001610964

そもそもなんで〈おたく〉と名付られたのかというと、アニメファンやSF読者たちが、友人相手に敬称で話しかけていたからです。
要するに、中森氏は「大人なのにアニメを見てる」ではなく「子供なのに尊敬語で話しかける」から、アニメファンをキモい人々として〈おたく〉と呼んだのです。

> おたく族──
> アニメ映画に並ぶ行列や、パソコンショップにたむろってるガキんちょどもの会話に耳をかたむけるとみると、「おたくさー……」てな調子で、友達を「おたく」呼ばわりしているのに驚かされる。
> 小学生時代から、このように相手との関係性に適度な距離を保とうとする二人称を使用することは、なんとなく修学旅行のお風呂で海パンはいての“ハダカのおつきあい”に通じる。
出典:難波功士『族の系譜学 ユース・サブカルチャーズの戦後史』青弓社、2007年

> 具体的にはU君との会話の中でだったのだろう。
> マニア少年たちが子ども同士なのにもかかわらず、友人を他人行儀に「おたく」の二人称で呼ぶ不思議。
出典:中森明夫「僕が『おたく』の名付け親になった事情」
別冊宝島104『おたくの本JICC出版局、1989年

> その頃、ここによくいた数人の間でだけ使われていたのが「おたく」という言葉だった。それを、“東京おとなクラブ Jr.”という連載をやらせてもらっていた『漫画ブリッコ』に、中森明夫が“おたくの研究”というのを書いたのだ。
> 80年代はじめは、「おたく」という言葉はそれほど特別な言葉だったわけではない(長谷川和彦監督の『太陽を盗んだ男』(79年)で、警部役の菅原文太に向かってDJの池上季実子が、いきなり「おたく……」と切り出すでしょう)。
https://weekly.ascii.jp/elem/000/000/144/144332/

〈おたく〉が尊敬語だったのは国語辞典にも載ってます。

> お-たく【お宅】
> ①相手の家・家庭・夫の尊敬語。
> ②相手や相手の所属する所(たとえば会社)をさす語。「─の景気はどうですか」
出典:金田一京介『新選国語辞典 第六版』小学館、1987年

以上のようにSF読者やアニメファンを〈おたく〉として誹謗中傷した中森氏ですが
1989年に起きた事件をきっかけに擁護派になりました。

中森明夫『東京トワイライトエイジ』
honsuki.jp/series/tokyo_twilightage/15855.html

> 宮台──死刑判決が出た宮崎勤被告と神戸の小学生殺人事件の酒鬼薔薇聖斗が比較され論じられているけど、こういう猟奇的事件が起こると、反射的にオタク・カルチャーが問題視される。
> 中森──今回も「犯人はオタクですか」「マスコミの影響は」とコメントを求められました。でも、今の日本の40代以下でマスコミの影響を受けていない人も、サブカルチャーの影響を受けていない人もいないんじゃないか。
> 「オタク」は多様に変化してきた言葉ですが、今やマスコミに過剰に影響を受けている人をオタクとすると“1億総オタク”ですよ。
出典:宮台真司中森明夫「オタクの現在」
宮台真司『新世紀のリアル』飛鳥新社、1997年

最近では以下のようなコラムを書いています。

> あれから三十年が経過して、まもなく平成も終わる。「おたく」は「オタク」へと変化した。単に表記のみではない。当初、宮崎事件の余波で(犯罪者予備軍といった)ネガティブ・イメージが流布され、バッシングされていたものが、時を経て、ライトに脱色された。漫画、アニメ、アイドル等を愛好する趣味人といった程度の認識だろう。
> 平成生まれの世代、現在三十歳以下の若者たちには、当然、宮崎事件の記憶はない。彼らが「オタク」という語でイメージするのは、何だろう。
出典︰中森明夫「オタクとサブカルの三十年史」
表現者クライテリオン2019年3月号』啓文社書房

オタク定義論

本来の〈おたく〉とは
「アニメやSF小説などのマニアックな趣味を愛好する小中学生。子供なのに行儀が良く言葉遣いも丁寧であり、お友達相手に敬称(おたく)で話しかけるような人物」
という意味です。
世間一般で言われている〈オタク〉は、マスコミ報道によって広まった物であり、本来の定義とは別物です。

参考資料からの抜粋
> アニメファンの小学生や中学生が「おたくらのセル画あれでしょ……」とかそういう言い方をするでしょう?
> 大人のサラリーマンが「おたくは……」というのは聞いたことがあったけど、僕が小学生や中学生の時、使ったことなかったから奇妙な感じを受けたんです。
出典:中森明夫氏インタビュー「〈おたく〉族の神話学」
『筑波學生新聞』1985臨時増刊号

オタク (おたく)とは https://dic.pixiv.net/a/%E3%82%AA%E3%82%BF%E3%82%AF